命令された事への怒りからかギルガメッシュがランスロットに食って掛かろうとしたのと『六王権』軍海軍死徒がヴィマーナに乗り込もうとしたのはほぼ同時だった。
そして当然だがそれに直ぐ気付き
「己!!ゴミの分際で王の財宝に手を出すとは何事か!!身の程をわきまえよ!!」
天罰の如く降り注ぐ宝具に当然だが海軍死徒は全滅する。
更に当然と言って良いものか極めて微妙だが、ギルガメッシュは周囲に一応(彼の視点では)敵ではないメドゥーサやランスロットがいるのだが、その事すらもお構いなしだった。
危険を感じ二人が離脱していなければ二人の頭上にも宝具が降り注いだだろう。
「っ、味方がいる事を考慮すらしていないのですか!彼は」
思わずメドゥーサの口から罵声が飛ぶ。
幸か不幸かその罵声は頭に血が上り激高して視野も極端に狭まったギルガメッシュの耳には入らなかった。
入れば彼の事だ。目の前のスミレを無視してメドゥーサを攻撃しただろう。
「雑種が!王たる我への暴言その身をもって悔い改めよ!!」
途端に『王の財宝(ゲート・オブ・バビロン)』が発動、無数の宝具がスミレ目掛けて撃ち込んだ。
五十九『少年』
「無駄だよぉ〜」
それに対抗するようにスミレは周囲の海水を一塊浮かび上がらせて水滴状の弾丸を発射、『王の財宝(ゲート・オブ・バビロン)』を迎撃する。
『王の財宝(ゲート・オブ・バビロン)』と海水の弾丸は互いを相殺し完全に拮抗する。
いや、徐々にスミレの放つ弾丸がギルガメッシュの『王の財宝(ゲート・オブ・バビロン)』を押し始める。
片やあらゆる伝説、英雄譚を鮮やかに彩った宝具の原典、片や空想具現化で弾丸と化した海水の水滴。
勝敗等火を見るよりも明らかの筈なのに何故後者を前者が押しているのか?
理由は双方の放つ武器と持ち主、この差にあった。
しかし、誤解なきように伏して頼むが、武器の差と言っても性能ではない。
ギルガメッシュの『王の財宝(ゲート・オブ・バビロン)』から射出される宝具の原典以上の武器等あるとすれば士郎の『剣の王国(キングダム・オブ・ブレイド)』しか存在しない。
此処で言う武器の差とは性能ではなく本質の差だった。
ギルガメッシュのそれは固体に対してスミレのそれは液体、その差だった。
つまり、いくら剣を連ねて、壁としてもどこかに隙間は出来る。
水滴では通らなくても更に細かくなった飛沫となれば通り抜けられる。
飛沫では無理でも粒子ならば・・・と次々と細かくなって剣の弾幕を掻い潜ってくる。
次々と水滴から飛沫、飛沫から粒子になった水の弾丸はギルガメッシュに襲い掛かる。
だが、当然だが、粒子ほどになった水滴でギルガメッシュをどうにか出来る筈も無く、鎧に不快な音を発せさせるだけか少し痛み、肌をやや赤くすると言う程度しか被害は無い。
しかし、その被害を受けたのがギルガメッシュだと言う事を忘れてはいけない。
僅かと言え王である自分に手傷を与えた事に、ただでさえ高い自尊心を刺激して、多い血の気が更に頭に集中、もはやギルガメッシュの狭い視野は更に狭まり、その視線にはもはやスミレしかいない。
だからこそギルガメッシュは『ヴィマーナ』を何の考えも無しに前進させる。
そして視野も狭まるだけ狭まった為に気付かなかった。
『ヴィマーナ』の下に目の前のそれと同じ大きさの水の塊が姿を現した事を。
そして、その塊から水の砲弾が発射されようとしていた事も。
その位置から見てもその狙いは鎮座するギルガメッシュを『ヴィマーナ』諸共貫く事は明白だった。
だが、まさに発射される寸前、『ヴィマーナ』と海面の狭い隙間を縫う様にミサイルが飛来、次々と水の塊を爆散させる。
同時に『ヴィマーナ』はギルガメッシュ自身の意思とは反対に急激に後退していく。
メドゥーサの鎖がいつの間にか『ヴィマーナ』の両翼を絡め、それを持ったメドゥーサが天馬を操り全力で引っ張っているからだ。
「!!おのれ!!蛇が!我の邪魔をする気か!!」
間一髪の所で助けられたにも関わらずギルガメッシュの口から出てきたのは当然と言えば当然かもしれないが無体と言えば無体な罵声だった。
「全く・・・これほど助け甲斐の無い相手も珍しいですね」
小声でメドゥーサが呟き、それが聞こえたのだろう、気遣うようにランスロットが声をかけた。
「諦めよ。あの男はそういう男だと割り切った方が良い。しかし、このままでは敵ではなく味方に我々がやられかねん。止むを得まい。強力だが手綱を捌き切れぬ戦力よりは多少弱くなっても手綱を捌ける味方の方が有益だ」
そう言ってランスロットは静かに懐から瓶を取り出す。
そして、あらゆる航空力学を無視するように『ヴィマーナ』に接近するヘリ。
「英雄王!!」
「何事だ!狂犬!」
そう言うギルガメッシュの開かれた口に丸薬を一つ放り込む。
「!!狂犬、貴様、我に何を飲ませた・・・!」
「錬剣の守護者より預かった。貴殿が手に負えなくなったら飲ませろと」
「なに??・・・!!ま・・さか、お、己ぇ!!偽者(フェイカー)風情が!!」
その罵声の続きは聞かれる事は無かった。
間の抜けた爆発音と煙と共にギルガメッシュは十歳前後の少年になってしまったのだから。
「もぅ・・何でこうも嫌われる事をやるんだろうな〜大人の僕は・・・だから何時まで経っても友達が一人しか出来ないってどうして気付かないのかなー本当に・・・」
見た目からも判りやすく肩を落として沈んだ様子で先ほどの自分の行いに文句を付けていた。
「こ、これは・・・」
あまりの変貌にメドゥーサが絶句している。
「まあ驚くのも無理は無い。私も最初これを見た時は言葉を失ったからな」
軽く苦笑するランスロット。
確かに誰も信じることはできないだろう、この素直そうな(いや、実際素直なのだが)少年が先ほどまで『暴君』・『傲慢』・『厚顔無恥』と言う言葉が擬人化し、服や鎧を着たような英雄王ギルガメッシュだったなど。
「あれれぇ?ちっちゃくなっちゃったぁ〜」
この変貌に敵であるスミレですら思わず手を止めてしまった。
「さて、英雄王」
「あ、はい、すいませんランスロットさん」
「まだ動かせそうか」
「うーん、今の状態だと、魔力量は減っていますから。まあ動かせない事はありませんけど、複雑な飛行は無理ですね」
「いや十分だ。私と女神が前に出る。援護頼めるか?」
「判りました。量は無理かもしれませんが質でどうにかカバーします。ランスロットさん、メドゥーサさんお気を付けて」
本人は混じり気の無い善意で言ったのだが、ランスロットもメドゥーサもなぜか裏を感じてしまうのはやはり言った人物の(悪い意味での)人徳と言うものだろう。
そんな思惑を余所に『ヴィマーナ』は子供ギルガメッシュの言葉通り後退し、その周囲に『王の財宝(ゲート・オブ・バビロン)』より剣を展開させる。
その数は確かに少ないが無闇に発射する気はないらしく、弓を引き絞るように狙いを定める。
「ぶぅ〜なんかぁ〜油断がなくなっちゃったーチャンスだったのに〜」
それを見たスミレの口調は変わらないが、その身にまとう空気が変わった。
「こちらも先に行かせる気はないからな」
「今度こそお覚悟を」
「そうはぁ〜させないぞぉ〜」
それと同時に、今度はスミレの周囲の空気が渦を巻き小規模な竜巻となる。
その竜巻は明らかな意思を持ってスミレの周囲を回転し続ける。
「来るか・・・!」
ランスロットの言葉と同時に竜巻はランスロットとメドゥーサに目掛けて突撃を開始、戦闘が再開された。
一方、パリでは、アルトリア、ヘラクレスと『地師』の力比べが未だ続いていた。
しかし、二対一の状況では『地師』に不利なのは自明の理、暫くすると力負けしたのか『地師』のバランスが崩れ、それと同時にアルトリアの剣は『地師』の腕を切り裂き、ヘラクレスの大剣は腕のひき潰しながら一気に『地師』の身体を切り裂いた。
二人の剣が交差し『地師』の身体は4つに分割され地に倒れる。
「随分とあっけないですがこれで一人、後一人!!」
やや拍子抜けした表情をしたアルトリアだったが直ぐに表情を引き締め『ウンディーネ』を展開して水弾で攻撃を続ける『水師』目掛けて攻撃を仕掛けようと試みるが
「!セイバーまだだ、まだ奴は死んでいない!!」
エミヤの言葉と自身の直感が咄嗟に横に回避させた。
それと同時にアルトリアのいた場所に見覚えのある豪腕が振り下ろされ小規模なクレーターを作り上げた。
振り返れば、『地師』が立っている。
しかも、分割された筈の身体はビデオの逆再生を見る様に再生している。
「やはりそうも簡単には行きませんか、ですが、その程度の再生能力『白翼公』で学習済みです!一度で駄目なら間断無く叩き込み再生させなければ良いだけの事!!」
「・・・ふむ、英霊よ俺の再生を並みのそれを同列に扱っていると・・・後悔するぞ」
「戯言を!!」
アルトリアとヘラクレスに加え、ルヴィア、カレンも加わり『地師』の戦いは熾烈をます。
また上空でも
「こんのぉ・・・しつこいしつこいしつこいってのよぉ!!」
「しつこくっても何度でも撃ってあげてよ!」
凛が撃つ魔力弾と『水師』の『ウンディーネ』が放つ水弾が次々とぶつかり合い相殺されていく。
『水師』には表情に余裕があるが、凛にはその表情に苛立ちが見えてきた。
何しろ『水師』が現れて、『水師』が凛への迎撃をまかされてからというもの、自分の攻撃は悉く『水師』によって阻まれ続けている。
無論『水師』の攻撃も阻んでいるのでおあいこと言えばその通りだが、魔術師として育てられてたと言え、生まれてから十八年そこそこの凛と『六王権』より幻獣王を授けられてから今日まで様々な経験、挫折も味わってきた『水師』とでは精神的余裕はおあいこではなかった。
その間にエミヤが『水師』への接近を試みようとするが護衛の死徒が次々と現れその行く手を遮る。
しかも、凛の魔力弾と『水師』の水弾、それがぶつかり、弾き飛ばされ、逸らされた事による流れ弾の多くがエミヤの周囲にも着弾する為自由な行動もままならない。
「くっ、凛は頭に血が上っているだけのようだが・・・あっちは計算ずくのようだな」
そう呟いて忌々しげに『水師』を見る。
その視線に気付いたのか、艶やかに、それでいてふてぶてしく笑う『水師』。
その笑みだけでも全てが計算されたものなのだと理解せざるおえない。
しかも、自分から視線を外す『水師』に更に怒りを募らせた凛は出鱈目に魔力弾をぶっ放す。
それを見てエミヤは戦場にも拘らず本気で頭を抱えそうになったのだが、これが予想外の効果を生んだ。
出鱈目に撃ち出された魔力弾は当然だが他の魔力弾の弾道の考慮等される筈も無く、それらは次々とぶつかり合う。
本来であれば接触した時点で爆発を起こす筈のだが、カレイドステッキ・・・いや、中のカレイドルビーの力なのか近距離で接触した魔力弾は爆発を起こす事無く、ビリヤードの弾のように弾かれ、その多くは迂回しパリに雪崩れ込もうとしていた『マモン』の群れのど真ん中に叩き込まれた。
また爆発する魔力弾も当然あったが、それすらも人類側に利する結果となった。
と言うもの爆発した場所の大半は『六王権』軍後方、つまり未だ進軍を続ける『マモン』部隊の真上。
直撃でないにしろその爆風は『マモン』の隊列を崩すのに役に立ち、そこを続けざまに来襲してきた国連空軍が袋叩きにしていく。
あまりの状況に敵も味方も、ましてや撃った凛本人ですら唖然としていたが、
「!!ど・・・どうよ!思い知った?これも全て計算どおり!」
我に返った凛の高笑いが響くが、冒頭のどもりがその内心を如実に表していた。
もっとも、どもりが無くとも凛を知る人物は全員一致でこう思っただろう。
『偶然の産物だ』と。
だが、そんな事など知る由も無い『水師』の表情からは感情が消えていた。
「・・・どうやら私の方が油断していたようですわね」
発せられたその声にも感情は何も篭っていない。
「どうやら驕り昂ぶっていたようですわね。良いですわ貴女を・・・いえ、ここにいる全ての敵を敵として認定します」
そう言うや『ウンディーネ』の構えが変わる。
前方に片手だけ突き出していたのが今度は両手を左右に大きく広げる。
「恐れ、怯え、絶望の内に死になさい」
顔にも声にも何の感情も見せる事無く淡々と言葉を紡ぐ『水師』の姿はその美貌とあいまって、まさしく水の女帝そのものだった。
セビーリャ、此処では最も激しい一騎打ちが現在進行形で繰り広げられていた。
「どらあああああ!」
「おらおらおらおら!」
セタンタと『風師』の戦いは速度を増し拳と槍が同等の速度で繰り出される。
拳を槍を最速で撃ち出し相手を貫こうと迫るがかわされ、相手のそれは最速かつ最短の動きで弾きかわし、それを既に何百と繰り返す。
無論だが、その速度は尋常ではなく、ほとんどの者には真紅の残光と腕の残像が無数に交差しているようにしか見えない。
その為に援護に向おうとした『六王権』軍、人類側を問わず近付いた者は全て逆にぶちのめされ、たちまちの内に蜂の巣状態になっていた。
更に不幸な事に当事者達はそのような事に全く気付いてもいなかった。
「はっ、やるじゃねえか!素手で向ってくるのを見た時は正直がっかりしたが、とんでもねえ、まさか俺の槍と互角の速度見せるとは思わなかったぜ!」
「手前こそやるな!容赦も遠慮もねえ槍捌き!さすがは英霊様か!」
憎まれ口と賞賛の混ざった台詞を投げ掛け合いながら戦いに飢えた大英霊と稀代の喧嘩狂は拳と槍をぶつけ合い続ける。
「全くあの馬鹿は・・・もう少し周囲に気を配れ」
そんな水を得た魚のように活き活きとセタンタとの戦いに興じる『風師』を横目で見やりながら『炎師』は投げやり気味に愚痴る・・・ディルムッドとイスカンダルを相手取りながら。
その動きには全く隙が無い堅実なもので、手始めとばかりにイスカンダルの『神威の車輪(ゴルティアス・ホイール)』を神牛諸共蹴り飛ばして神牛を昏倒させ、その後は、ディルムッドの双槍と戦車から降りてスパタを抜いて戦闘を挑むイスカンダル相手に互角以上の戦いを見せている。
「しかし、貴様は熱くて構わん。もう少し冷まさんのか」
「黙れ、この鎧は俺の存在そのもの。冷ませる訳がなかろう。それにしてもその減らず口まだ叩けるか。いっそその口ごと焼き払ってやろうか」
「そう上手く行くと思っているか!」
「貴様がいる以上は無理だろう・・・なっ!」
背後から襲い掛かるディルムッドの一撃を容易くかわし反撃の一撃を与えようとするが、ディルムッドも回避しイスカンダルと共に一旦距離を置く。
「中々やるのう」
「征服王、申し訳ないがあれは貴殿の戦車が無ければ太刀打ちできそうに無い。なので」
「判っておる。あれを叩き起こして来る。しかし、大丈夫か一人で」
「俺も英霊の端くれ、耐えて見せるさ」
「左様か、では武運を」
「ああ」
そう言ってイスカンダルは未だ神牛が昏倒したままの『神威の車輪(ゴルティアス・ホイール)』の元に向いディルムッドはそのまま『炎師』との一騎打ちに挑む。
それに『炎師』も真正面から受けて立つ。
「俺もクー・フーリン殿を見習い偶には興じてみるか・・・戦いを!」
「偶にはあの馬鹿の真似をするのも一興か・・・その戦い受けてたとう!」
二人は同時に踊りかかった。
イスタンブールでは『光師』と『闇師』が一時期展開させた『ガブリエル』・『ルシファー』の影響が未だ色濃く残っていた。
どの兵士も落ち着き無く時には空を見上げ、何かを探すように視線を漂わせる。
その為に迎撃の効率は著しく落ち、一部の前線では『六王権』軍に押され、飲み込まれる部隊まで存在していた。
『埋葬機関』も縦横無尽に駆け回り援護に向っているが、そもそも少数精鋭の『埋葬機関』では限界もある。
早い話、全てに手が回らないのが実情であった。
しかも『埋葬機関』以外で最大戦力である『七夫人』を動かそうにも彼女達はそれぞれ戦闘指揮や拠点防衛に回っておりとても前線に回せる状況ではない。
そして『七夫人』で唯一自由に動けるアルクェイド、アルトルージュは人類側にこの混乱をもたらした張本人達と対峙している真っ最中だった。
「てりゃああ」
「えいさー!」
気の抜けた掛け声と共に衝撃波を繰り出す。
当然だが、その掛け声とは裏腹に放たれた衝撃波は本物、直撃受ければ無事ではすまないのは明白だった。
「受ける訳無いでしょう、そんな単調な攻撃」
「そうそう」
そう言って展開された光と闇の防壁が衝撃波を全て飲み込みそれを光と闇の衝撃波と変えて逆にアルクェイド達に撃ちだす。
「へえ、少しはやるみたいだけど」
「舐めてない?あんた達こそ私とアルクちゃんの事」
そう言って顔色を変える事無く片手の一振りで衝撃波を粉砕、それを散弾として『光師』、『闇師』に撃ち返した。
当然それは障壁に防がれるが時間をおかずにアルクェイド、は『闇師』へアルトルージュは『光師』へそれぞれ奇襲を仕掛ける。
やはり、真祖と死徒の姫君の一撃には障壁は容易く砕け散り、二人は接近戦を試みるが『光師』、『闇師』は同時に距離を取る。
「やっぱり難敵だね姉ちゃん」
「全くよ私達が接近戦で真祖と死徒のお姫様に勝てる訳無いでしょう。白兵戦下手なんだから。こんな事だったら『風師』の馬鹿と交代すべきだったわ」
「でも姉ちゃん、今更言っても」
「判っているわよ仕方の無い事くらい」
そんな漫才に近いやり取りを尻目にアルクェイド、アルトルージュの眼が細まり全身から更に濃密な殺気が吹き上がる。
「へーえ、さして強くも無いくせに私達とやりあおうって言うの?」
「本気で舐められたものね良いわよ。その驕り心底後悔させてあげるから」
それに今度は『光師』達が反応した。
「むっ、ちょっと訂正してよ僕達がさして強くない?」
「私達は接近戦が下手だって言っただけよ。弱いなんて言ってないわ。その証拠に・・・」
そう言うや『闇師』の手から闇を凝り固めたような球体が姿を現す。
そしてそれを『闇師』は動きの鈍い人類側部隊に投じる。
それがその部隊の眼と鼻の先まで接近した瞬間それは急激に膨張、部隊を丸ごと呑み込んで消滅した。
「!な、何をしたのよ今」
「ちょっとした超重力場・・・わかる様に言えばブラックホールかしら。それを放って展開しただけよ」
アルクェイドの詰問に涼しい顔で『闇師』が答える。
その語尾に重なるように悲鳴が上がった。
「今度は何よ!」
「ん?僕だって大した事してないよ。ホワイトホールを造って今姉ちゃんが飲み込んだ人たちを解放してあげただけだよ」
『光師』の言葉に偽りは微塵も無い。
ただ、飲み込まれた人間が、ブラックホールによって原型等留める事無くただの肉の一塊になって味方の頭上に落とした事を口にしなかったが。
「前言を撤回する必要があるわね」
「そのようね、やはり『六王権』の側近を名乗るだけあるわね。見くびれば死ぬわね私達」
「そう言う事よ。まあ」
「見くびろうとそうでないにしろ死んだけどね!お姉ちゃん達は!」
そう言うや『闇師』、『光師』からは無論の事、『ルシファー』、『ガブリエル』も光と闇の玉を次々と展開、それを次から次へと叩き込んだ。
目の前のアルクェイド、アルトルージュを葬る為に。
最終決戦は未だ序盤、モスクワ、ロンドンの決着はもはや見たが、他は未だ動きが見えずと言った所であった。